エゴイスト  〜菊丸side〜





ついこの間まで、不二じゃなきゃダメだって思ってた。

…けど。エゴってもっと単純なんだよね。

「運命の人」なんて、結局は自分の理想を相手に押し付けたエゴの塊でしょ?

だから…代わりはあるんだって気づいたんだ。

自分の理想通りの「運命の人」なんて、全世界を探せば何人もいるはずだから。

俺にとって不二の代わりは…

越前リョーマだった。


「来るかな…」


おチビに乱暴してから十日目。天気の良い日曜日。

…昨日、おチビに呼び出しの電話をした。


「来なかったら…」


俺は最悪の呼び出し方をした。「来ないんだったら、裸の写真、学園中にバラ撒くから」…そう言って。

本当の所は、どうしようか迷ってるけど。


「…英二先輩」

「!」


後ろを振り向いたら、おチビがいた。機嫌が悪そうに、眉間に皺を寄せて…。


「そーんな表情してっと、手塚みたいになっちゃうよん?」


俺が眉間に伸ばした手を、おチビはパシッと叩き落した。


「触らないで」

「ありゃ。随分嫌われちゃったな」


本気で怒ってるみたい。まぁ、当然だけどね。

俺がおチビの立場だったら…きっと相手を殴ってるだろうし。


「…何の用スか?俺、脅されても…周助から離れないから…!」

「んにゃ、別にそれはいいよ。その内、嫌でも俺の事が好きになるし。…それより、デートして欲しいんだよね」


俺が自信満々に言ったのが気に食わないのか、おチビは更にムスッとした表情になった。


「好きになんかならないよ。…デートも嫌」

「ふぅん?写真、バラ撒いていいの?」


途端、おチビは悔しそうに唇を噛むと、俺の腕を引っ張った。


「いいよ!何処に行きたいの!?」

「へへ、じゃあねー…まずはファミレス行こう?俺、ご飯食べてないんだよね」


俺が舌を出して言うと、おチビはキョトンとした顔になった。


「…そういう事でいいの?」

「何?変な事想像した?…おチビってばヤーラーシー」


俺の言葉に、おチビは顔を真っ赤にした。


「そんなんじゃない!もう、行くよ!」


おチビの百面相が面白くて、俺はクスクス笑いながら、ズンズンと歩くおチビの後ろを歩いた。

そして携帯を取り出すと、おチビの姿を写メで撮った。

…ある人物に、送信。

俺はまた、クスクスと笑った。きっと、これから起こるだろう、出来事を想像して。


「…英二先輩?何、ニヤニヤしてんの?」

「ん?」


ゆったりと歩いていた俺を怪しんだのか、おチビが俺の隣に戻って来た。

不審そうな目で見られ、俺は肩を竦めた。


「何でもないよ。さ、入ろうか」


俺は近くにあったファミレスに、おチビを押し込んだ。


「おチビは何食べる?」

「…チョコレートパフェ」

「おっけ」


店員さんをつかまえて、オムライスとチョコレートパフェを頼んだ。

そんなに待つ事なく、運ばれた。


「…おいし?」

「うん」


もうあまり警戒されてないのか、おチビは幸せそうな表情でパフェを頬張っていた。

…可愛いなぁ。いつもこれぐらい、年相応の表情してればいいのに。


「…何見てんすか?」

「いやいや、可愛いなって思ってね」


あ、いつもの生意気おチビに逆戻り?

呆れた表情されちゃった。


「おチビ、頬っぺたにチョコついてる」


俺が笑いながら言うと、おチビは逆の頬を拭いた。

焦れったくなって、俺はおチビのチョコを指で拭って、ペロリと舐めた。


「な、何してんすか?!」

「へ?別に…手についたチョコを舐めただけじゃん」

「…だからって…」


顔を赤くしたおチビが、ふるふると首を振っていた。

純情だなぁ。不二の奴、まだおチビとHしてないのかな。…よく我慢出来るな。


「やーっぱり気が変わった!行こ、おチビ!」

「って、どこにっスか!」


おチビを立たせると、会計を済ませてファミレスを出た。

…向かったのは、無人のラブホテル。


「え、英二先輩…?違うって、言ったよね…」

「んー…でも気が変わった。抱かせてくれるよね?」


俺がニッと笑うと、おチビは身体をブルリと震わせた。

怯えてるね。そんなに怖がらなくても、痛い事はしないのに。


「ほら、おいで…」


怯えきってるおチビの手を引き、中に入った。

…入る前に、忘れずにメールを打った。『今からおチビとHするから』…さっきと同じアドレスに、送信。


「先輩…ヤダよ…。俺、周助がいるから…」

「だーめ。あの写真撒かれたら…困るでしょ?」


部屋を適当に選んで、入った。

あまり趣味が良いとは思えない内装だけど…まぁ、ラブホだし、多少は大目に見ないとね。

おチビをベッドまで引っ張ると、押し倒した。


「ど?気持ち乗ってきた?」

「………ヤダ」


おチビは変わらず涙を流しそうな表情で俺を見ていた。

…腹が立つ。不二より、俺と一緒に居る方が幸せになれるのに。

何でそれに気付かないんだ。


「もう駄目。俺も我慢の限界」

「…ヒャッ」


おチビの手を、俺のアソコに触れさせた。

質量を増したモノに驚いて、おチビは高い声を上げた。


「…これが、おチビの中に入るんだよ」

「無理ぃ…!嫌だよ…!!」

「………」


本気で嫌がってるのにムカついて、俺は乱暴におチビの服を脱がせた。

…まるで、写真を撮ったあの日のように。


「…ヤダ…英二、先輩…!」

「大丈夫…気持ち良くしてあげる」


ズボンを下ろすと、おチビのモノを銜え込んだ。

自慢じゃないけど、不二のをよくやってたから、結構上手いんだよね。

おチビも抵抗の力を弱めて、喘ぎ始めた。


「ん…はぁ、うん…」

「ねぇ、不二とはどこまでいったの?コレはやってもらった?」

「………う」

「正直に答えないと、イかせてあげないよ?」


根元をキュッと掴んだから、おチビが苦しそうに呻き声を上げた。

これって結構苦しいよね。おチビ、我慢出来るかな…?


「ん…はなし、て…」

「だから、答えてよ?」

「してもらった…!まだ、挿れてないけど…!」

「……へぇ」


俺がパッと手を離すと、おチビは勢い良く液を放った。

息を整えると、恨みがましそうに俺を睨んだ。


「じゃあさ、俺が初めての人…なんだ?」

「そこまで…やるつもり、なの…?」


おチビは我慢出来なくなったようで、とうとう涙を流した。

俺はそんな姿に心を痛めながら、おチビの身体を抱き寄せた。


「…そんなに俺の事、嫌い?」

「だって…!先輩、俺に嫌がらせしてるだけじゃん!周助をとられた腹いせでしょっ…!」

「違うよ…それは違う」


おチビの唇を、荒々しく奪った。

最初は抵抗したが、舌を絡めるうちに、徐々に大人しくなった。


「もう不二の事は関係ない。俺は…おチビと付き合いたい」


真っ直ぐ見つめると、おチビは居心地が悪そうに視線をずらした。


「俺は…周助が好き…」

「でもその不二が、おチビと手塚を重ねて見てるとしたら?」

「え…?」

「おチビは、手塚の代わりにされてるんだよ。俺なら…傷つけない…」


キュッと抱きしめると、おチビは困惑気に身を寄せてきた。

きっと、暫くは俺の言った意味が理解出来ないだろう。

でもいつか…理解する日がくる。不二が手塚を忘れない限り、絶対に。


「…俺…どうすればいいの…?」

「辛くなったら俺を頼って。…きっと、おチビの力になってあげられるから」


もう抱く気も失せてしまったから、俺はそっと、おチビの首筋にキスマークを残した。

…不二だけのものじゃない。俺のものでもあるんだ。


「英二先輩…」


おチビはちょっと笑顔を向けると、俺の胸に顔を押し当てた。

今はこれでいい。おチビの心の拠り所になれれば。

そしていつかきっと…おチビの一番大切な人になる。

愛情とは裏腹に、あまりに計算しつくされた行動に…少し嫌気がさした。

けれどここで引くわけにはいかず、俺は実行する。

俺のエゴを、確実に満たせるように。